2011年2月18日に宝島社から発行された中山七里先生の推理小説「連続殺人鬼カエル男」の感想を書いていきます。
あらすじ
冬の埼玉県でおこる連続殺人事件、殺害方法は、どれも普通の感覚をもった人間の犯行とは思えないものばかり。そして事件現場には、ひらがなで書かれた奇妙なメモが残されている。犯人逮捕のため被害者に共通点を見つけようと懸命に捜査を続ける警察、それをあざ笑うかのように止まらない事件、無差別殺人に怯える市民。犯人はどのような人物像なのか、目的はなんなのか、主に捜査を担当する刑事の視点で物語は進んでいく。
みどころ① 事件現場に残された奇妙なメモ
事件現場には奇妙なメモが残されています。
きょう、かえるをつかまえたよ。 はこのなかにいれていろいろあそんだけど、だんだんあきてきた。 おもいついた。みのむしのかっこうにしてみよう。 くちからはりをつけてたかいたかいところにつるしてみよう。 小説本文より抜粋
各事件現場にこのようなメモが残されています。メディアは犯人に「カエル男」と名付け、猟奇的殺人鬼のイメージを浸透させていきます。各段落の「吊るす」「潰す」「解剖する」「告げる」ごとに事件現場の様子も異なり、メモも準じた内容になっています。警察はこの残されたメモから犯人は異常者であると推測して捜査をしていきます。
丁寧な描写で表現されているため、陰鬱な事件現場が頭でイメージされます。まったく共通点がない被害者が同一犯によって被害にあう恐ろしさを植え付けられました。(すごく地味な部分に犯人につながる共通点はあるのですが、主人公の刑事同様見逃していました。)
みどころ② 途中に挟まれる回想など
基本的に捜査をすすめる刑事の視点で物語は進行していきます。途中、別視点の回想シーンなどが挟まれます。
- 犯人と思われる人物の幼少期のできごと
- 主人公が刑事を目指すきっかけとなった事件
犯人と思われる人物の人格形成がどのようにされていったかが伝わってきます。
主人公の刑事のトラウマも表現されています。
登場人物の感情を理解するためにとても必要なシーンだと思いました。表現が生々しいので、
みどころ③ 警察署での戦闘シーン
連続殺人鬼へ市民に恐怖が伝播した結果、暴動が起こります。その狂気に駆られた市民と警察官の戦闘シーンが印象に残っています。特に主人公が痛めつけられる描写は、本当に痛そうで自分の足で想像するレベルでした。
みどころ④ 衝撃のラスト
- 誰がカエル男なのか、動機はなにか
- 事件の構造はなにか
連続殺人事件は終わりを向かえます。犯人である「カエル男」とは誰なのか、犯行目的はなにかなど事件の全容が明らかになっていくシーンは読み応えがあります。犯人が事件の全容をすべて自分の口から語ってくれるので、今までの警察の捜査の徒労感がより伝わってきます。
最後は続編への予感を感じさせるシーンで締められています。(「連続殺人鬼カエル男ふたたび」へ続く)
コメント